最終更新日:2014/ 5/20(火) 18:10:49
論文「国際問題評論家の先駆・米田実」
書誌情報
- 名称:
- 国際問題評論家の先駆・米田実:その経歴・人物・言説
- 種別:
- 論文(学術誌に収録されたもの)
- 単著/共著の別:
- 単著
- 発行年月:
- 1999年5月
- 発表誌:
- 『政治経済史学』第393号
- ISSN:
- 02864266
- ページ数:
- 1―33頁(33頁)
概要
1.論文の要旨
米田実は、明治末から昭和戦中期にかけて活躍した国際問題評論家である。筆者は彼のことを、当時の日本人の対外認識に大きな影響を及ぼした人物と考へてゐるが、その経歴や人物、言説について、これまで研究の対象となることはほとんどなかつた。本稿では、これらの点について、当時の史料や遺族からの聴取り調査などによつて解明し、今後の研究の基礎とすることをめざしてゐる。
(1)経歴
米田は一八七八年、福岡県久留米市に生れた。一六歳で単身上京し、苦学してゐたところを勝海舟に見出される。一九歳のときに勝の援助をうけて渡米、オレゴン大学などで法学や政治学を学んだ。その一方で、サンフランシスコで発行されてゐた邦字新聞の編集にも携つた。日本に帰国したあと、東京朝日新聞に入社し、そこで外報部長や論説委員長などを務める。その傍ら、明治大学政治経済学部の教授として二〇年以上にわたつて外交史を講じ、さらに『中央公論』や『外交時報』などに、厖大な数の論稿を発表しつづけた。
(2)人物
米田の人物像を解明するため、筆者は関係者の回想録などを調査し、遺族からの聴取りも実施した。その結果、明かになつたのは、その多面的な人物像であつた。米田は、謹厳でありながら純朴な一面を持ち、多数の聴衆を相手にする講演を好んで引受ける反面、人並外れて神経質なところがあつた。たとへば彼は、一九二三年に東京朝日の編輯局長代理に任ぜられたが、その重責に耐へられず、わづか数日で辞任を申し出てゐる。生活習慣をみても、純和風の生活様式を守るなど保守的な部分を持ちながら、妻が社会に出て働くこと(妻のわかは、日本女子大学の教授であつた)や、娘たちが大学に進むことを容認するなど、すぐれて進歩的な部分も兼ね備へてゐた。さらに、類稀な健筆家でありながら、一方で自分の意見を他に強ひることに、きはめて慎重な人物でもあつた。
(3)言説
大正期に発表された、国際連盟に関する彼の言説を検討すると、そこには二つの特徴が見いだされる。第一は、紙幅の多くを、歴史的経緯などの事実関係の解説に割いてゐることである。すなはち米田は、これらの論稿において、関係する歴史的事実や条約の規定などを詳細に説明してゐるのである。そして第二の特徴は、米田が国際連盟に対して、穏健で漸進主義的な態度をとつたことである。具体的にいふと、彼は連盟を好意的に捉へながらも、過度に肯定的になることはなかつた。また連盟の将来については、段階的にその進歩発展を図るべきと訴へてゐた。そして、このやうな彼の言説は、その豊かな情報量と穏健な態度から、大正期の日本社会に広く受け容れられることになつたのだつた。
2.論文の目次
- はじめに
- 第一章 経歴
- 一 少年時代(一八七八~一八九六年)
- 二 在米時代(一八九六~一九〇七年)
- 三 東朝時代(一九〇八~一九三三年)
- 四 東朝退社以後(一九三四~一九四八年)
- 第二章 人物
- 一 人柄
- 二 生活習慣
- 三 他者への態度
- 第三章 言説
- 一 事実解説の重視
- 二 漸進主義的態度
- をはりに
- 附記「米田」の読み方について
正誤表・補足情報
1.正誤情報
誤 | 正 | |
---|---|---|
3頁11行目 | オレゴン州立大学 | オレゴン大学 |
3頁14行目 | アイオワ州立大学 | アイオワ大学 |
3頁16行目 | カリフォルニア州立大学 | カリフォルニア大学 | 4頁10行目 | 鷲津文三 | 鷲頭文三 |
12頁7行目 | 考へねばならぬことが | 考へねばならぬことは |
13頁10行目 | 活動とは言ふ外ない | 活動と言ふ外ない |
14頁4行目 | 予も雖も、 | 予と雖も、 |
23頁下段19行目 | 各州立大学 | 各大学 |
24頁下段9行目 | アイオワ州立大学およびカリフォルニア州立大学への | アイオワ大学への |
24頁下段10行目 | アイオワ州立大学 | アイオワ大学 |
24頁下段11行目 | カリフォルニア州立大学 | カリフォルニア大学 |
25頁下段18行目 | なお鷲津...資料もある。 | 〈削除〉 |
29頁上段4行目 | 日号。 | 日号夕刊。 |
29頁上段14行目 | 出て、 | 出で、 |
32頁上段1行目 | 「よねだ(た)と | 「よねだ(た)」と |
※他にお気づきの点がありましたら、ご一報いただけると幸です。
2.補足情報
入手・閲覧方法
各地の図書館(大学図書館・公共図書館)で閲覧できます。下記のリンク先から検索してみてください。
- 国公私立大学図書館(蔵書検索-WebcatPlus-)→検索結果
- 国立国会図書館(NDL Online)→検索結果
- 全国自治体図書館(蔵書検索)→「タイトル」欄に「政治経済史学」と入力(コピー&ペースト)して検索ボタンを押して下さい。
全文データ
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